「めそめそさん」
ソティロ

「めそめそさん」



ある朝目が覚めると
隣に知らない女の子が寝ていた
くびが細くて大きい目をしている
名前はめそめそさんというらしい
それからぼくはめそめそさんと暮らしている


めそめそさんと居るとたいそう疲れる
始終ネガティブなことばかりしゃべるし
そのうえぼくのそばを片時も離れようとしない
ただし友達と遊ぶときはついて来ない
だけど帰りに駅につくと
わざわざ迎えに来てくれている


めそめそさんと居るとお金をたくさんつかう
買い物に行くと必要ないものを次々かごに入れる
値札は基本見ない
ごはんを食べに行くときはわざわざ値の張る店を選ぶ
そこでめそめそさんはたらふく食べる
かと思えばまったくものを食べない日もある


めそめそさんはいつでも元気で夜更かしをする
始終ネガティブなことをしゃべるので
布団に入ってもぼくを眠らせない
新聞が配られ鳥が鳴き窓が眩しくなる
明け方頃ようやくめそめそさんが寝息をたてて
ぼくは倒れるように眠る


めそめそさんが特にキゲンのいいときは
一日中部屋でゆっくりするのが好きみたい
眠らないくせに寝っころがるのが好きなのだ
そんな日は外へ行くのも許してくれないので
予定は全部強制キャンセル
昼から朝まで本を読んだり音楽を聴いたり
見るでもなく映画をぼーっと見たりする
まあそれは結構楽しくて好きだけど
ほんとに絶好調のときは
外出禁止読書禁止睡眠禁止で
延々布団のなかでネガティブなおしゃべりを続ける
これはとてもしんどい
正直しんどい


何故めそめそさんなんかと居るのかというと
めそめそさんはぼくをぜったい裏切らないから
わくわくくんはそうとうひどいやつで
ぼくをおだてて最後に必ず裏切る
ぼくをぬかよろこびさせて転ばせてかげで笑っている
めそめそさんはぼくのことを
ほんとうによくわかってくれるし
ぼくをぜったい裏切らない
死ぬまで一緒に居てくれると思うきっと


じゃあめそめそさんを好きかというと


  それはちょっと微妙



ぼくはなんとなくめそめそさんと暮らしている
ずいぶん長い間


自由詩 「めそめそさん」 Copyright ソティロ 2007-04-26 03:46:53
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