ひとつ うたう
木立 悟
雨が降り
音は昇り
遠く高く
曇のかたわらで鳴っている
かがやきと時間の洞のなか
青い文字に生まれる子
ゆうるりとひらき
外へ外へ歩み去る
離れた硝子と硝子が響き
貝の命を描くとき
青は短い螺旋をほどき
見えすぎる音を曇らせてゆく
目をつむる先
進むまなざし
億の石をすぎ
ひとつに触れる
明滅と風と
鉄が出会い
影を拾う午後の手を
青はひとり昇りゆく
かざした手の影 木の影が
子の片目と片耳になり
なかば銀に消えかけながら
青の軌跡をうたいはじめる
自由詩
ひとつ うたう
Copyright
木立 悟
2007-04-25 09:26:07