少年に乗ったイルカ
シリ・カゲル

少年に乗ったイルカは
本来そこにいるべきでない人々を
本来の居場所に導いていく
それが仕事なのだ

例えば、あすこの大教室で
頬杖をついて居眠りしている女学生
彼女なんかも
少年に乗ったイルカのお得意様だ

少年に乗ったイルカは
女学生の隣の席につかつかと歩み寄って
彼女の目の周りにメンソレータムを塗ると
びっくりして飛び起きた彼女の形の良い耳に
「勉強よりも大好きなこと、あるんじゃない?」
と囁きかける
その説教はとても包容力にあふれていて感動モノなのだが
それでも大教室で居眠りをしている
学生の数はすさまじくて
なかなか仕事ははかどらない

しかも
少年に乗ったイルカの説教は
ものすごい高周波だから
我々人間たちの耳には
届かない。


自由詩 少年に乗ったイルカ Copyright シリ・カゲル 2007-04-24 23:03:14
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