なないろ
ワタナベ



夕空と海の混じり合うそのすきまに
すべり込むうみどりの影のさみしさ
赤い包みのキャンディーをポケットから取り出すと
口に入れる間もなく風景に溶ける




”ちかみちはこっち!”
追いかけてくるだいだいを振り払いながら
ななめになった鉄筋コンクリートの間を駆け抜ける
大人たちの手の届かない所へいこう!
ふたりで




夜空に張り付いた満月と街灯の
黄色い光の下でタバコに火をつける
鋭角の月を夜空の中央に戻すために
僕は分度器をとりだして街灯の下にそっと置く




さわさわとするみどりがあすふぁるとにえがくかげ




空は零れ落ちるような瑞々しい青さで
こんな日はむしょうに海が見たくなる
どこまでも青の続く地平線を想像しながら
そこに自分を浮かべてみる
水面が耳をくすぐるその感触に
世界がさかさまになるのを感じて
ふいにさみしくなる




藍色の伝説
何色を混ぜても深まるだけの強い色




朝焼けの色は何色だろうか
首をひねりながら小鳥の鳴き声を聞く早朝に
コーヒーとパンはいかが?
ミルクは多めでたのむよ
それはきっとうすいうすい色だから


せきとうおうりょくせいらんし











自由詩 なないろ Copyright ワタナベ 2004-05-02 00:38:37
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