瓶底眼鏡
佐々宝砂

きみの目がとりたてて好きだってことではないんだ
そんなこと言った覚えはない
きみだって
不意に
なんてことない仕草に
たとえばYシャツの袖をまくりあげたりする動作に
くらっとすることはあるだろう
まあないかもしれないけど
少なくともぼくが相手じゃないかもしれないけど
なんて言い方をしたいわけでもないんだけど
昼休みに
ときどき眼鏡をはずして拭いてるよね
すごく厚い眼鏡だよね
いまどき珍しいくらいの
あー眼鏡なんかはどうでもいいんだけど
っていうかどうでもよくはないんだけど
っていうかぼくは何を言いたいんだ
っていうか言いたいことはひとつか
ふたつかみっつ
整理してみよう
ひとつめは
きみの目が特別にきれいだとは思ってないってこと
じゃないや
あーもーまどろっこしい
って
きみは別にまどろっこしくない
まどろっこしいのはぼく
ひとことで言うと
きみの目を眼鏡ごしでなく見たいんだけど
えーと
この状況下だと
たぶんぼくがはずしても怒らないとは思うんだけど
きみにはずしてほしい
きみの手で
きみの眼鏡を
ぼくのために


自由詩 瓶底眼鏡 Copyright 佐々宝砂 2007-04-24 19:23:07
notebook Home 戻る  過去 未来