童子の決路
なかがわひろか

お箸を持つほうが右で
お茶碗を持つほうが左で
今はご飯の時間じゃないけれど
右手と左手を出してみて

童子はそうやって右と左を確認した

右は強者だけが生き残る世界
左は弱者も一緒に底上げする世界

童子は迷った
一生懸命お箸を持つ手とお茶碗を持つ手を
見比べながら
どっちの世界に行けばいいか
童子は迷った

右に行けば
強い者たちの仲間入り
左に行けば
弱いやつとも仲間になる

童子は迷った
童子は迷った

だけど童子は知っていた
どちらも結局同じだと
童子は本当は知っていた
どちらも結局変わりはしない

右に行っても
左に行っても
右には茶碗がないだけで
左には箸がないだけで

結局どちらにも
足りない物が
あるだけの世界だと

童子は決めた
童子は決めた

真っ直ぐ進もう
真っ直ぐ進もう

そこに道はないけれど
飯は空いてる手で
食えればいい

(「童子の決路」)


自由詩 童子の決路 Copyright なかがわひろか 2007-04-24 00:32:42
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