「 せんとうかいし。 」
PULL.







いまから。
戦争するから、
戦闘するよと言われたので、
ぼくは真っ先に、
一番高いところにいる。
ヤツを殺した。
勝った。
勝ったので、
ぼくは成り上がり、
先頭に行くことになった。
戦場の先頭では、
どこも低い人ばかりがいて、
みんなで殺し合っていて、
ぼくは、
あんまり楽しく殺せなかった。
楽しくないのでさぼっていると、
高い人に怒られた。
もっと殺せと怒られた。
腹が立った。
だから、
高い人の首根っこをつかんで、
先頭に連れて行った。
高い人は嫌がったけれど、
戦争するなら戦闘しなよと、
言ってあげた。
高い人は子供みたいに、
泣いて、
駄々をこねる。
尻を蹴飛ばした。
きゃいんきゃいん。
高い人は犬みたいに泣いて向こうに走って征った。
向こうは戦場の先頭だった。
高い人は、
戦場に立った。
はじめて立った。
あっさりと死んだ。
あっさりと死ぬので、
面白かった。
戻って、
他の高い人を探してみた。
高い人は、
いるところにはごろごろいた。
連れて行く。
立たせた。
死んだ。
また連れて来た。
また死んだ。
もっと連れて来た。
無理矢理連れて来た。
もっと死んだ。
だんだん高い人が少なくなった。
だんだん戦場が狭くなった。
気が付くと、
高い人はひとりもいなくなっていて、
低い人たちはみんな戦場の先頭で、
笑い合っていた。
敵も味方も、
みんな低い人だった。
ぼくたちはみんなで協力して、
戦場に、
井戸を掘った。
井戸から汲んだ水で、
ぼくは汚れた手を、
洗い流した。
戦場の土は赤く、
なお赫く染まっていた。












           了。



自由詩 「 せんとうかいし。 」 Copyright PULL. 2007-04-23 13:23:22
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