逃避
ねろ
夜が色彩を放ちながら
あめふらしを待っている
鍵をなくされた僕は
近づいても遠ざかっても
同じ場所にいる
牛の頭骨をかぶった
悪魔が迎えに来るよ
君と同じ足取りとそのテンポ
ゆっくりと掌の黄色を奪っていく
なんど踝を数えても足りないのは
3分に1人子供が生まれているから
僕のボタンが家出した朝に
連なっては繰り返すリズム
黒い動物が人を食べては殺し
食べては殺しを繰り返しながら
嘔吐している
吐き出された女の子には
食いちぎられた人間の腕や足や
髪の毛と反吐が纏わりついている
眠っているのか起きているのかは
分からないがまるまったきり
うごかないでいる
僕が考えるのはキリンの睫毛について
それはきっと彼女の胎内で育まれたもので
初めから睫毛があるわけではなく
それはキリンの形すら象ってはいないのだろう
僕はジャガイモを剥くかなり大きなものでも
剥いているうちに小さくなってしまう
僕は食事をするかなり沢山の人に取り囲まれながら
食は殺しであることに誰もを気付いていない振りをしている
僕は言葉をひたすら食うそして言葉を殺す
キリンの首には前ボタンが5つ住みついて
僕の首よりはかなり居心地が良いという
睫毛からは雨が降ってきていて
僕はひたすらキリンも食うそしてキリンを殺す
彼女は菜食主義で草食動物のふりをする
いつかキリンのお母さんになる夢をみながら
吐き出されたまま丸まってねむっている
交差点に立っている僕は信号の水色を気にしている
背中からは家出していったボタンが飛び跳ねながらついてくる
空ではあちらこちらで産み落とされる前のキリンの心音がしている
キリンは分離してあちらこちらに茶色い斑と黄色が散乱している