ひとつ またたく
木立 悟





接ぎ木を重ねて枯れた樹が
庭の入り口をふさいでいる
小さな寄生木の花が咲き
風は粉と名前を運び
誰もいない街に撒いてゆく


山に残る最後の雪に
ひとりはぐれた鶴がいて
夕暮れ近い午後を舞い
風が撒くものを浴びながら
冬の背中に求婚している


指の傷をなめる音が
いつのまにか指笛となり
魚や曇や水を呼びよせ
棄てられた通りに面した空き地で
無言にまみれた翼を洗う


遠い雨
遠い石
青と銀は響きつづける
出会うことなく
離れつづける


雪から雪へ 門から門へ
うたは歩き またたいている
土の下の花 飛ぶことのない
ひとりのはばたき
触れることのない手に呼びかける















自由詩 ひとつ またたく Copyright 木立 悟 2007-04-21 22:01:29
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