優しすぎるUちゃん
うおくきん
デイケア、僕はひとりぽつん、いつもひとりぽつん。
浮いているのには生まれてしまった時から慣れていたよね。
だけどね、その日は違ったんだよね。
女の娘が話しかけてくれたんだね。
名前はUちゃん。
ちっちゃくて目がぱっちりしてて髪型もパッツンなかわいすぎる女の娘。
無反応でみにくい僕にもなぜか話しかけてくれる。
なぜか笑いかけてくれる。
なぜかちょっかいかけてくれる。
なぜか「にっしー、にっしー」って親しみを込めて呼びかけてくれる・・・
やめてやめて、僕に優しくしないで。
やめてやめて、僕を苦しめないで。
封印しておきたかったはずの余計な感情が蘇ってしまうから。
お願いだから、僕に優しくするのやめてやめてやめてね・・・
・・・なんて嘘、そんなの嘘、嬉しかったに決まっているね。
ゆっくり何日もかけて仲良くなっていったね。
プログラムで僕がギターに挑戦した時もひどいありさまだったってのに誉めてくれたね。
野球の時も僕がひどいミスするたびに勇気づける声をかけてくれたね。
ごはんの時も知らない人ばかりでどこに座ったらいいかわからなくて泣きそうだった僕のために席を取っていてくれたね。
元気な時はスピッツが好きなUちゃん。
苦しい時はCoccoが好きなUちゃん。
僕に優しいUちゃん、皆に優しいUちゃん。
僕の好きなUちゃん、皆が好きなUちゃん。
それなのに、僕はUちゃんをズタズタに傷つけてしまったね。
お互いの病気の話になった時、ついつい聞きすぎてしまったね。
PTSDなUちゃんの封印しておきたかった想像以上の絶望的なトラウマを僕はえぐりだしてしまったね。
癒着していたはずの心の傷口がザックンザックンに切り開かれて、崩れ落ちて泣き出してしまったね。
そんな姿も素敵だね、なんて思ってしまった僕は終わっているね。
その日から、僕はデイケアに通うことができなくなってしまったんだね。
よーするに、僕はまた逃げたんだね。
はあ、僕はまた好きな女の娘を傷つけてしまったね。
なんでこんなんなっちゃうんだろーね。
はあ、僕は、傷つけてばかり、好きな女の娘も、大切な友達も、どーでもいい自分も。
はあ、僕のセカイ、皆、傷だらけ。
ドス黒い血が流れ続けているね。
はあ、そんなものをすすらないと僕は生きていけないのかね?