短い針〜ある坂道の途中で〜
青の詩人



ある飲み会の後
ひとりで坂をのぼる

街灯が白い坂道を照らし
空の黒と鮮やかなコントラストをつくり
感傷に浸るに充分な舞台を与えてくれた
星は出ているだろうか
うつむいて歩くからわからない

高校生でいた頃がだいぶ昔に感じられる
中学生 小学生の頃なんて 昔も昔 夢のまた夢


いつだって自分をどこかに隠していたよな
ふざけられずにいたよな
本気を出せずにいたよな
特にあの子の前では

あんなにも当たり前だったぼくらの映像が
すうっと消えていく感覚
夢を見ていたんだな きっと
次に目を覚ましたときには
今が消えているかもしれない

そう思って少しだけ怖くなった
坂道の途中で足を止めた


君ともいつか会えなくなるんだね
話せなくなるんだね
その笑顔も 機嫌悪いような顔も 
泣き顔は知らないけど
いつか夢になるんだね


力なく歩き出す足
目の前に続くただ真っ白な道
誰とも一緒に歩けない孤独な未来




だったらもっと話せればいいのに
ありきたりなことも必要だけど
もっと大事なことを 
もっと話せればいいのに

前に進むたびに
前に進めていないと気づく
ただ時計の針を前に進めただけ


そうやって
後悔ばっかで生きてくのか
いつも大事なときにひとりきりで
寂しさを持てないことを寂しがるようにして


いつか
この夢が消える前に
短針の僕と同じ速度の
短針の君がほしい
長針や秒針のスピードも
0.01秒のデジタルの正確さも要らない
もっとゆっくりでもっと曖昧な
君と歩きたい この坂道を
そんなおかしな時計がいい

たとえそれが夢であっても


自由詩 短い針〜ある坂道の途中で〜 Copyright 青の詩人 2007-04-21 02:47:24
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