点滅
湾鶴

こぽこぽこぼれる 透明なグラスに
わたしが点滅するというのは
こういうとき なのだろうか
あふれる濃縮還元ジュースは
せつなくて

地下鉄の降り口をまちがえた
まちがったとわかっても
歩きつづけた
オフィスビル デパート 居酒屋
横目で流して
100均 八百屋 そば・うどん屋
入り口がどんどん小さくなって
公園と住宅街
なかよし公園
ペンキの剥げた すべりだいを
みつめてようやく
雨が降っていることに気付く
湿った頭皮は
あたたかい

小雨にささやかれ
歩行者用信号機
点滅する
赤箱の人は きいろい太陽の光のよう
青箱の人は きいろい月の光のよう

あかいひとがみているでんしんばしらのかげから
あおいひとがおびえているくろいしゃっぽをにぎりしめ
あかいあかいあかいあかいあかいあかいあかいあかい

青い

泥水を蹴って
自転車が横を通る
並ぶ電信柱は
つめたくて
家までは まだ遠い


自由詩 点滅 Copyright 湾鶴 2004-04-30 23:37:23
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