ノート(柱)
木立 悟


骨のような柱が燃えている
燃え尽き くずおれるまで
ただ波のなかに立っている


流れ着くものが燃えている
山の影が土を覆い
波だけが明るく揺れている


昨日の足跡が残っている
浅くふちどる影はつらなり
もうひとつの波打ち際を描いている


うたも蝶も石も手も
流れ着くものとともに燃えているのに
ただ柱だけが焼け焦げている


一度だけ強い波が来て
昨日の足跡を流し去り
影のまたたきは静かになる


ひろい服を着た隊商がすぎ
濡れた土に
乾いた砂を残してゆく


燃えるものらは隊商を追い
波のなかには
ただ柱だけが燃えている


波は眠り
空は眠る
ただ柱だけが燃えている















自由詩 ノート(柱) Copyright 木立 悟 2007-04-20 09:21:31
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