ノート(柱)
木立 悟
骨のような柱が燃えている
燃え尽き くずおれるまで
ただ波のなかに立っている
流れ着くものが燃えている
山の影が土を覆い
波だけが明るく揺れている
昨日の足跡が残っている
浅くふちどる影はつらなり
もうひとつの波打ち際を描いている
うたも蝶も石も手も
流れ着くものとともに燃えているのに
ただ柱だけが焼け焦げている
一度だけ強い波が来て
昨日の足跡を流し去り
影のまたたきは静かになる
ひろい服を着た隊商がすぎ
濡れた土に
乾いた砂を残してゆく
燃えるものらは隊商を追い
波のなかには
ただ柱だけが燃えている
波は眠り
空は眠る
ただ柱だけが燃えている
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