朝のバス
山中 烏流

ストライプから
学生の香りがする、頃
私は意識を繋ぎ止めることに
必死になっている
 
目の前の
おもちゃの看板の意味を考えることに
全神経を集中させて
まどろんでいる
落ちては、いない
 
 
また一人
擦れ違った
紺色を揺らして
横を通り過ぎる
 
柑橘系の
良い、香りがして
少しだけ
(ほんの少しだけ)
意識が飛んでいく
 
 
夢心地の中
空を飛んでいる、ような
ふわふわした感覚
地に足は
多分、ついていない
 
唸りを上げて行く手を遮る
機械の断片でさえ
今なら
そう、今なら
乗り越えて行ける
 
まどろみ
夢心地
 
 
気が付いて、
 
 
目を開くと
いつもと変わらぬ風景に
多少、がっかりしながらも
安心して
 
寝過ごしてはいけない、と
意識を叩き起こす
柑橘系が誘うけれど
気付かないふりをする
 
 
自分のチェックからは
果たして
何の香りが
しているのだろうか
 
定かではないが
調べることも出来ない
 
もどかしい
 
 
日だまりの香りなら、良いな
 
 
また
一人、まどろんで
柑橘系に負けて
 
夢を見て
 
寝過ごして。


自由詩 朝のバス Copyright 山中 烏流 2007-04-20 09:21:28
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