画廊
小川 葉

ひとは誰かと接しながら
頭の中のキャンバスのようなものに
相手の絵を描いているようなところがないだろうか

デッサンがうまくいかなくて
何度も何度も描き直し苦心している絵

とりあえずの下絵が出来たけれど
色を塗ろうかどうか迷っている絵

色をうすくうすく塗り重ねながら
背景には何を描くべきか悩んでいる絵

色を塗りすぎたことを知りながら
さらに塗りすぎて汚してしまった絵

細かい部分を写実的に欠点までも精密に
描きすぎてしまった絵

もう少しで完成なのにいつまでも
ためらって筆が遠のいてしまった絵

ためらっているうちに
時が過ぎるほど遠く色あせていく絵

いろいろ工夫してみたものの
思ったよりも面白さに欠ける絵

うまく描けているけれども
ただ奇麗なだけで魅力に欠ける絵

ついに破ってしまった絵

不意に破られてしまった絵

いつのまにか消えてしまった絵

画廊には描きかけの絵ばかり
ごたごたいっぱいあるだけで
完成した絵はまだ一枚もない


自由詩 画廊 Copyright 小川 葉 2007-04-20 00:45:19
notebook Home