ノルウェイの森
はじめ

 僕は孤立している部屋でノルウェイの森を読み その主題歌を聴いている
 本の世界に吸い込まれていくような歌だ
 よくここまで忠実に表現できるなと思う
 僕は死んだ
 この暗闇の中で生きていかないといけない
 深夜番組を入れている
 ハルマゲドンの主題歌のエアロスミスの曲がかかる
 その曲とノルウェイの森の主題歌が蔓のように絡まり合い音符が混ざり合って僕の耳に入っていく
 僕に翼が生えていれば 君のことを迎えに行けるのに
 君は何処かにいるような気がする その場所の掟を破って君を連れ出してしまいそうだ
 涙が溢れて焦点が定まらなくなり 文章がぼやけて見える
 ここは奥深くの地下のようだ
 僕が助かる方法は僕が書いた詩を誰かが何人かが読んでくれることだ
 そうすれば僕の背中に立派な羽が生えてみんなの力のおかげで君の元へと行けるのだ
 本当の空は真っ白で 太陽が燦々と輝いている
 君のいる街は雲の上にある
 僕はその街の家を一軒一軒回って君を捜し続ける
 そして君に伝えられなかった言葉を告げるのだ
 君のことを詩にして書くことを僕はしてはいけないと思う
 でも君への想いを具現化して書くことは許されるんじゃないかと思うんだ
 この主題歌のピアノは君が街から弾いているんだね
 君が作曲した
 なんて君の奏でる伴奏は素敵で上手なのだろう
 僕は鬱蒼とした葉の色の濃いノルウェイの森の前に立っているのを想像する
 辺りは暗くてぽっかりと開いた黒暗暗たる森の入口から一歩も動き出すことができない
 これは君の呪いだと思う
 いい意味でも悪い意味でも
 森の奥にはもう何もないことは知ってるよ
 でもこの入口の前に立つことによってあの頃の僕の感情を思い出させる
 忘れてはいけない大切な感情
 森の奥で確かに君はピアノを弾いていたね
 日溜まりの中のグランドピアノ
 僕は君のピアノの調律していた
 嬉しくて 嬉しくて 君を愛することが掛け替えの無い生きる喜びだった
 この君の聖なるバックコーラスで僕は空に昇ることができる


自由詩 ノルウェイの森 Copyright はじめ 2007-04-19 03:41:08
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