天使の裏切り
なかがわひろか

地球に降り立った天使は
神様に間違われ
みんなにちやほやされて
子どもたちの教科書に載ったりもして
毎日毎日良い気分

ある日真っ黒なカラスに乗って
悪魔がやってきた

あんた今神様やってんだって?

天使は神様が怒って
悪魔を使いにやったのだと思い
ビクビクした

なんにも心配しなくていい
じいさんは地球なんかに興味がないのさ
あんたは勝手に神を名乗ってりゃいい

天使はとっても安心して
じゃあなんで君は来たんだいと
悪魔に聞いた

スカウトさ
あんたがいなくなっちまったんで
おいらの仕事が増えて仕方ねぇ
手ごろなやつを見つけたら
とっとと消えるさ

天使は早く悪魔に行って欲しかったから
神が好きそうな若い女を一人見つくろって
悪魔に渡した

ありがとよ
探す手間が省けたよ
それにしても
神を名乗るあんたが
簡単に人を売るなんてな

悪魔は笑って
女を乗せて
黒いカラスと空に消えた

天使はなんとか自分を守った
天使はとっても安心した
自分を信じるやつは腐るほどいる
一人くらい犠牲にしても
誰も文句は言わねぇ

天使に売られた女は
悪魔にこう言った
よかったわ
これでやっと仕事が見つかった

やれやれ
悪魔は首を振った

天使も人間も神様も
みんなどこか狂ってる

やれやれ

まともなのは自分だけ

(「天使の裏切り」)


自由詩 天使の裏切り Copyright なかがわひろか 2007-04-19 01:40:03
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