ECHO TIME18
板谷みきょう
だだっ広い海を目の前にしていながら
気付く事なく
知る事も出来ず
眼もくれずに只ひたすら
浜辺に座り込み
瞳を落として
立ち上がり歩くのも忘れて
ちっぽけな両の手で精一杯
足元の砂をすくいあげ
握り締め
一粒もこぼさぬ様に
一粒もこぼさぬ様にと
強く握り締めたはずが
強ければ強い程
握れば握るだけ
指の間から希望や愛や夢や
素敵な思い出が
こぼれ落ちていく――――
両手を広げてみると
てのひらには
汗を吸いベトついた
悪意やら偽善やら弁解やらが
ほろほろとへつらい
払っても払いきれずに
まるで初めからそうだった様に
こびりつき離れず
あらためて
足元の砂をすくいあげ
一粒もこぼさぬ様に
一粒もこぼさぬ様にと
強く握り締めても又
同じ繰り返し
目の前にはだだっ広い
果てのない海原があると云うのに
立ち上がり
歩くのも忘れて
ただ足元の砂に
瞳を落として
精一杯
ちっぽけな両の手で
すくいあげている
そんな私を
支えてくれる妻が居て
子が居て
だだっ広い海を目の前にしていながら