回帰線
はな 


風の脚が遠ざかってゆく
あさいわだちは
春の周りをくすぶっていて
いろとりどりのかざみどりが
ゆるゆると迂回しては
家を さがす



信号が青に変わり
ひとなみは とうとうと こうさしていく
あなたが帰っていって
いくつめの春か かぞえているとき
わたしを見て笑ったのも
あなたの 
血を受けた人で

立ち止まれば

あなたは目を伏せて
やわらかな
波の中で




だからそれで良かったのだと
マニキュアを塗るとき
味見をして
舌先をやけどしたとき
いつも 
その風は 吹いていて




おれんじで 匂いたちそうな電灯や
ただあおい
そらにそびえてゆく
貸しかんばんの かぜにふかれて白く鳴る
その、音に


無色の世界が
染まりゆく 背中で
むずむずとゆれる
いろづいてゆくときには
ほほに
さくらあめを、降らす
わだちは濡れていろどりを増し
あしもとで
まだ ぐずつく



そっと
ふみこえていった線のさきに
あの日があり
雨が降り
足下まで 続いていた



最近 
春があしもとでのびちぢみして
ひまそうなので
わたしもたまに 屈伸する




自由詩 回帰線 Copyright はな  2007-04-19 00:27:01
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