*春に過ごす*
かおる


寝過ごす街に喝を入れるのは
ピンヒールの靴音

一年中食べ過ぎたり、飲み過ぎたりする街が
眠り姫の物語する季節は春

ぽっかり微笑む陽射しに
散歩中の乳母車の赤ちゃんも
営業中の働き者も
公園のベンチで一息ついたなら
魔女の魔法をかけられたのか
うつらうつら
ひなたぼっこの猫のように眠り込む

駅から吐き出された人々が一日中
忙しそうに働く摩天楼も
鴉だけがせわしなく
蠢いている時間帯には
まるで
オーロラ姫を助け出す
王子の気分を味わえる

さて、帰ろうかと思った一瞬
打ち合わせと称して飲みに出かける課長から
丸投げされた企画を
プレゼン資料にする為、会社に急ぐ
カツンカツンと響くヒールは
うっそうと茂った蔦を
切り倒した斧の音みたい

眠りこけていた街をほどく呪文


自由詩 *春に過ごす* Copyright かおる 2007-04-18 17:25:09
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