ヴィーナス・ブリッジⅡ
Rin K

空の、あまりの青さが
出逢った日と同じ色をしていたから
なんだか違和感を覚えてしまって
それを誤魔化すように
むきになって笑ってみた

ここは夜景もいいけれど
飾り気のない素顔の街が見えるから
昼間だっていいね
そんなことを話しながら、もう
透明の影のような君と
小さなベンチに並んで座った
最後の発信履歴を見ると
とっくにどこかで途切れてしまって
行ったきり帰ってこない電波に
半分のせかけて、やめた
どうしようもない問いかけが
そこここの木に引っかかったまま揺れている

ねえ 僕と君と、
どちらが先に気づいたのだろう
僕が寂しいときだけ
君を欲していたこと
ねえ 僕ら、
生まれてからいくつ
言葉を知っただろう
そして ふたり、
つないだ手の隙間から
いくつの言葉を失くしながら
ここまで歩いてきたのだろう

きっとその中には
見えるはずもない永遠などのように、
文字にすることだけが
いともたやすい言葉もあって
もちろん愛もありがとうもあったのだろうけれど
もういまさら、どこにも見つけようがない
ただ、僕はこれから先も
そうやって多くを失くしながら生きていくことだけを
ひたむきに信じていた

ここは夜景もいいけれど
夜はかなり冷えるから
そろそろ帰ったほうがいいね
もう君の姿は風に溶けたようで
またさようなら、を言いそびれた




自由詩 ヴィーナス・ブリッジⅡ Copyright Rin K 2007-04-18 16:37:23
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