一人ぼっちの電柱
ぽえむ君
山奥の一軒の家のために
立てられた電柱は
その家に誰も住まなくなってからも
一人で立っていた
電線はつながっていたが
電気が流れることはもう期待できない
電柱は昔を思い出した
まだその家に家族が住んでいた頃
赤いランドセルを背負った子どもが
元気よく走りながら
ただいまっ
と家の中に入る
電柱はその子の部屋に
電気を流してあげる
いつもどこかしらの部屋に
電気を流していた
その家族とつながっていた
今は一人ぼっち
つながったままの孤独
風の拍子に
開いていた家の扉がばたんと
音を立てていた