君にわがままな僕のお願い
うおくきん

昨日、駅の改札で、伸ばしすぎだけれど手入れの行き届いた綺麗な黒い前髪と花粉症対策にしては季節外れだなーとも思うおおげさなマスクで80%顔を隠した昔の友達とすれちがったんだよ。

顔が隠れてても美少女なのが僕には妄想でわかったんだ。その敵意たっぷりな邪眼な目つきで君だってわかったんだ。
目に入る人間皆敵に見えてしまうそんな邪眼だよ。
目に入る人間皆敵に変えてしまうそんな邪眼だよ。
ぎょろぎょろぎらり細かったり大きかったりでかわいいそんな邪眼だよ。
地獄の生きざまでしかないよね。
僕もそうだったからわかるんだ。深いつばつきハットかぶらないと外出れなかった時期があるから。
わかったからなんだって言うんだ。

そんな娘はセカイにいっぱいいるし、いちいち助けてあげてられないよ。助けてあげたいけれど。
てか、助けられるとでも思ってんのかよ、なにその上から視点。むかつく。僕、敵認定だよ。
でも、僕は君たちの妄想上の敵を味方に変えてあげたいんだ。ほんとの敵を判別するためにね。
誰と闘えばいいのかわからないのって苦しいもの。
誰かと闘わなくちゃいけないのって苦しいもの。
僕もそうだったからわかるんだ。セカイ中の人間皆敵に見えてしまった時期があるから。
わかったからなんだって言うんだ。

でも、妄想上でもいいからさ、優しい味方に囲まれて、なんとかぼんやりキャッキャッ楽しく生きていけるといいね。
そうすればその敵意たっぷりな邪眼も、歳の離れた弟をかわいがる優しさたたえたお姉さんのような目つきに変わるかもしれないじゃん。

そうしたら、その邪眼も隠す必要なくなって、隠すために伸ばしすぎた前髪もサッパリさせてさ、そのかわいいおでこなんかだせるようになっちゃうかもしれないじゃん、そのほうがいいと思うよ。

そうしたら、そのおおげさなマスクも外せて、一時間ごとにリップで手入れされてるよーなそのかわいい唇さらせるようになるかもしれないじゃん、そのほうがいいと思うよ。
昔みたいに笑いなよ、顔隠すのやめなよ、そのほうがいいと思うよ。だって、君はかわいいんだからさ。

せっかくかわいい女の娘に生まれてきたんだからさ。
ねえ、昔みたいに笑って生きていこうよ。
でも、地獄なんだろーね。なんで顔隠すのかわからないけど地獄を味わったんだろーね。
でも、昔みたいに笑って生きていこうよ。

ごめんね、わがままな僕のお願いでした。


自由詩 君にわがままな僕のお願い Copyright うおくきん 2007-04-18 07:44:29
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