花瓶の花
鯨 勇魚

窓際の花瓶に挿した花を想うと
降る雨の着水点はまあるくて
本当にまあるくて
揺れる心も
みずたまりの世界の中だけでも
空から降る生命の一滴

内側からでしょうか
包まれたいと
願う湿度は高めの部屋で
世の中を閉じ込めた花瓶

水の揺らぎはありますか
流れはありますか

散らせたくない花びら

つれてきてください
たくさんの涙でもいいのです
つれてきてください

情態に想わせ想像すること
思い込ませること信じること
事実を知ることで
雨降りの地球ぐるぐるまわり
時折のやさしさに出会い
きびしさを感じながらも
涙の海にかこまれてもいた

ゆらなりとした中で
こまかしくありながら
本当はざわざわでした

あたしたちが揺れてまわる
涙なんてここにたくさんある
息荒くても
海をなぐさめていた季節に
ゆびさきだけでも繋ぐ言葉を
ほしいまま
泣きじゃくる窓をあけたら
帰る場所を忘れない
低い空がありました
たくさん在りすぎた窓際から見た
水溜りに映っていたのは

いつから故郷は
固定された場所ではなく
感情をもつ人となって
存命しているのでした
静かにしていれば
精神を包んでくれたのか
それとも
そこまでやさしくできないか
そう大地から離れてしまった茎

雨雲のように混ぜて
たくさんたくさんの色を
まぜっ返して汚れた色に
なってしまうでしょう

あたしたちの中に雨は降り
塩分濃度をいくら薄めたところで
血液には変わりないのです
そしてみずたまりを蹴り
うつむくから
揺れる波音が空間を
歪ませていました

落雷を落とす
大きな空が届かないから求めて
草木は伸びるでしょう
愛して欲しいのです

雨と涙とは繋がり
海と大地とは水平線で繋がり

揺れる波紋が
空間を歪ませていても
窓際の花瓶に挿した花を想うと

現実
あの病室を思い出してしまう



自由詩 花瓶の花 Copyright 鯨 勇魚 2007-04-18 06:07:03
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