あまがえるの雨宿り
なかがわひろか
トントンとドアを叩く
あまがえるが立っていた
雨が降りすぎてねぇ
しばらく雨宿りさせてくれないか
あまがえるは
びしょびしょの体をタオルで拭いて
どっかとソファに座り込んだ
スコッチでも飲むかい
僕がそう尋ねると
にんまりとした顔で
ゲコゲコと言った
こう雨ばかり降られちゃかなわねぇ
三杯目のスコッチを飲み干すと
あまがえるはそう愚痴りだした
でも雨は大切だろ?
僕がそう言うとあまがえるは首を振って
名前だけで判断しちゃいけねぇ
と不貞腐れた様に言った
雨が小降りになってきた
あまがえるは少し酔っ払った体をふらつかせながら
ありがとよ
そう言って部屋を出ていった
雲の切れ間から
陽が差してきた
名前だけで判断しちゃいけねぇ
僕はその科白を口にした
いい言葉だ
太陽が申し訳なさそうに
覗いている
(「あまがえるの雨宿り」)