黒猫の腸
なかがわひろか

黒猫の腸はとても長いっていうから
綱引き縄の代わりに使ってみたんだ

ぬるぬるしていることは事実だよ
それはとても握りにくいものではあった

だけどそれなりにコツを掴めば
ちゃんと綱引きになったんだ

黒猫の腸は
綱引き縄として
その役割を十分に果たしてくれた

いくら左右に引っ張っても
千切れることはなかったし
ちゃんと全チームの試合が終わるまで
それは誰が見ても
綱引き縄だと言えた

綱引きを終えて
巻き取ったら
始めた頃より少し長くなっていたけど

僕は黒猫の腸を
元あったところに戻しておいた

黒猫はどうだいといわんばかりの顔をして
そのまま去っていった

多少長くなってしまった腸は
少しはみ出していたけど

黒猫はそんなことぐらいじゃ
気にも留めない

大したやつさ

(「黒猫の腸」)


自由詩 黒猫の腸 Copyright なかがわひろか 2007-04-17 01:21:50
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