リベンジ
A-29

吹雪の八甲田山のようなところを深夜野良着一枚で這いずり回ってるんですよ。もうたいへんな風圧。あ。いや。信州辺りかもしれない。きそのなぁ〜みたいな。黒部とかそんな感じの。どこだか知らないけど。とにかくたくさんの人が野武士みたいな連中に切り殺されたところから僕だけ逃げのびてんですよ。それで沼へ飛び込むんです。凍ってないのが変ですが。で二メートルか三メートルもぐるとあるんですよ。それが。見えるのも変だけど。真っ暗な沼の底に僕が乗って来たらしいUFOみたいなやつが。僕は手前で失神するんですけどね。そのマシーンが僕を吸い込むんですよ。そんで体の外から中まで特殊な液体で洗浄してほかほかに乾燥させてさらさらの服を着せて狭くて真っ暗なコックピットに座らせるんです。全自動で。でしばらくすると計器類のランプがいろいろ灯ってモニターに宇宙図みたいなもんが表示されるんです。「あんドーナツ」っていうとコーラとあんドーナツがすぐ出ます。ひとくちふたくち食ってもぐもぐしながら「発進」っていうとマシーンが静かに動き出して沼から出ちゃうんですよ。「窓!窓!」っていうとそれまで無かった窓が現れて外が見える。真っ暗で吹雪が舞ってるのしか分からないけどただモニターにはあらゆる情報が表示されてるんですよ。で「低空」っていうとすーっと等高線に沿うように飛ぶんですけどそこではじめてマシーンが問いかけるんですよ。女の声で。「リベンジ?」って。そのへんで寝ちゃいます。毎晩。


未詩・独白 リベンジ Copyright A-29 2007-04-17 01:14:31
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