凪の湖に
小川 葉
その日
少女はふられた
暮れ泥む夕日に背を向けて
永遠であるはずの
太陽の時代の終焉に
背を向けるように
湖を前に立ち
鏡の静かな凪の湖に
少女の影
日がしずむほど
ながくながく
ほそくほそく
伸びていき
その姿は
自分ではない
美しい憧れ
少女はつらかった
風が吹き
湖の影ゆらゆらと
泣いている
暮れる夕日は
少女とともに
その影とともに
闇に消えた
時は過ぎて
ある朝
あの湖畔に
ひとりの女性
あの夕暮れの
少女の影が
そこにいた
隣には
お似合いのひと
鏡の静かな凪の湖に
幸せな
二人の笑顔
美しくきれいに
浮かんだ