ノート(街を分ける川)
木立 悟




灰と黒の輪のなかに
ただ無造作にひかれた線が
鳥と魚と人になり
じっと浅瀬の水を見ている


珠の髪飾りをつけた影が
影から影へ走り去り
赤茶の径 銀の腕
角から角へ増えてゆく


川の水を
鳥と魚と人の色が流れる
水以外のものに触れ
また新たな鳥と魚と人になる


見知らぬ街に染まる手に
こぼしてはいけない こぼしてもいいから
窓からも 空からも
ふたつの声が降りそそぐ


径の隅を
髪飾りの珠が幾つかころがり
水たまりをすぎるときだけ
鈴のような音をたてる


陽の下を 川のなかを
新たな群れが歩いてゆく
輪の外に生まれた子とけだものが
色と行方を見つめている
















自由詩 ノート(街を分ける川) Copyright 木立 悟 2007-04-16 23:22:32
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