ノート(街を分ける川)
木立 悟
灰と黒の輪のなかに
ただ無造作にひかれた線が
鳥と魚と人になり
じっと浅瀬の水を見ている
珠の髪飾りをつけた影が
影から影へ走り去り
赤茶の径 銀の腕
角から角へ増えてゆく
川の水を
鳥と魚と人の色が流れる
水以外のものに触れ
また新たな鳥と魚と人になる
見知らぬ街に染まる手に
こぼしてはいけない こぼしてもいいから
窓からも 空からも
ふたつの声が降りそそぐ
径の隅を
髪飾りの珠が幾つかころがり
水たまりをすぎるときだけ
鈴のような音をたてる
陽の下を 川のなかを
新たな群れが歩いてゆく
輪の外に生まれた子とけだものが
色と行方を見つめている
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