遠泳
川口 掌
遠く地平線と重なる彼方に
ポツンと浮かぶ島影が見える
いつだったかもう覚えていない
遠い昔
スターターが鳴らした合図に
僕らは一斉に飛び込み 泳ぎ始めた
大人達の作る澱みから澱みへ
流れの弱まった所を選んで
自分だけでは まだ泳げ無くても
少しづつ すこしづつ 前に進んで
そうやって 泳ぎを覚え 自力で進める様になった
今 そう信じてあの島を見る
あの島は
いつだったかもう覚えていない
遠い昔 あの頃と
少しも変わらず
地平線と重なる所にポツンと浮かんでいる
そして
僕達が
泳ぎ着くのを待っている
そして
僕たちが
泳ぎ着く事を否定している