夢の花
服部 剛
君のその白い腕に
ふれたいよ
君のその首すじに
髪の薫りを
かぎたいよ
瞳と瞳を一つに重ね
すべての世界を
溶かしたい
*
( 車窓はいつも
( 列車と同じ速度で広がる
( 夢の巻物に描かれた
( 街の風景を
( 輪郭の歪んだスローモーションで
( 走り過ぎる
( 遥かな昨日へ
( 小さく遠のいてゆく
( あの忘れ物が入った箱を
( 置き去りに
*
君はいつも
虚ろなぼくの顔を
うっすら映す窓の向こう側
部屋の木椅子に座り
首を傾げて眠り
遠い国の夢を見ている
*
( 近づこうと
( するほど
( 手の届かないところへ
( 遠のいてゆく
( 闇に咲く
( 白い花