シャルトリューズ
鯨 勇魚


  燈籠影絵に語るあたしには、
  咲かない蕾で、生まれた。
  夜露は蒼玉月。
  照らす。離れ、離れ並木。
  萌芽だからこそ摘まみたい。
  それまでの枝先。
  潤んだ紅水晶。

  後悔はしたくないから、
  剥離からの一枝が震え、
  抱きしめる度に舞い散る。

  ひら。ひら、ひとりてのひら。
  
  枯れ落ちない為の、
  花瓶。は、あなたを覚えています。


    (水瓶座かしら、
     重なり合う桜は、
     あるのだけれど、
     繋ぐ星座線。
     ひとりでは、
     自らを抱きしめる行動で、
     さらに、散らすでしょう)
 

  朝焼けのない、
  まぶた。に花びら、桜霞。
  燈籠。は、消えていくままに、


  てのなるほうへ。
  ねえ、てのなるほうへ。
  さきかさなりあう、
  むこう、がわ。
  かこ。は、みえないとは、
  いわない。


  慕う蕾は聞こえているかい。
  あたしの帰路に龍路地からの、
  桜清水流れ、神社。
  うねる、夢眠る枝垂れ。
  桜の髪飾りが、ひとひら。
  波紋を聴かせる。
  遠浅の海鳴りのような、
  素振りしか。
  今は、出来ません。

  枝垂れ桜は泪を浮かべ、
  しばらく朝陽を見送り、
  白い。と、湿る風の音。
  下る方向は波の、
  あがった場所から、
  身体という入れ物から、
  くだり、くだり。
  ぷらう、ぷらう。
  陽光を移し替えている。
  見上げ、高い場所で、
  吹きのばした香り。
  
  空が光って青いとき、
  この桜と、この桜。
  ぱしゃ、ぱしゃ。
  今年のおしまい。は、
  どちらが先かしら。

  あんまりにも、あおく、
  ひかって、うるんで、
  さくら、透かすから。
  両手で、掬って、
  あたしの入れ物に、
  ひとゆびずつ、一滴ずつ。
  溢れ出すぎりぎりかな?
  の、笑み軽く、桜。
  浮かべたなら蓋をして。
  
  未だ咲かない蕾と見つめ合う。
  今日も桜清水の前髪は。
  うつむいたまま。
  
  慕う蕾は聞こえているかい。
  あたしの帰路に龍路地からの、
  桜清水流れ、神社。
  うねる、夢眠る枝垂れ。
  桜の髪飾りが、ひとひら。
  波紋を聴かせる。
  遠浅の海鳴りのような、
  素振りしか。
  今は、出来ません。

  枝垂れ桜遠く、離れ並木。
  巡り刻む、桜月夜。


自由詩 シャルトリューズ Copyright 鯨 勇魚 2007-04-16 07:23:04
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