ダイアリー・ダイアリー 3・31
平山ネムデ

3・31

波打ち際で砂をすくい
「これで世界は救済された」と
両手いっぱいの満足

守られるものは
両手いっぱいの満足のため
あとは
波が足跡を消すのを待っている
待っている

波打ち際にしゃがみこんで
「罪をおゆるしください」と
指先で砂の告白

ゆるしを乞うのは
砂に残した罪のこと
あとは
波が指跡を消すのを待っている
待っている

人々の記憶が
風化するのを待っている

海に角砂糖をひとつ落として
「世界を変えたのだ」と
言うタイミングを待っている
待っている

待っている
待っている

世界の思考が停止するのを待っている
待っている

海に足を踏み入れて
広がる波紋を指差しながら
「世界は始まった」と

虚栄と偽善の海で溺れながら
すべてが水平線になるのを待っている
待っている


自由詩 ダイアリー・ダイアリー 3・31 Copyright 平山ネムデ 2007-04-16 03:19:56
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