スケッチ
んなこたーない
深海に沈められた室内では
ハイヒールの赤だけが
食卓の上に映えている
グラスを持ち上げ
椅子は娼婦のように倒れこむ
みずから解体する時計の悪意
ねじまがった窓枠から転落する
鈍痛のようなフラッシュバック
片方のスリッパを残して
夜風は今日も方位を失う
奪われるべきものだけが奪われ
世界中の劇場が
その重たい扉を閉ざすとき
炎の磁石は
踏みにじられた愛の予感に
ただひたすら闇を手探る
自由詩
スケッチ
Copyright
んなこたーない
2007-04-16 00:56:22