海風
銀猫
波が編む細やかなレースが
爪先の向こうで結ばれてはほどけ
刻と陽射しは
翡翠や白の模様をすこし深くに施す
水平線、と呼ぶには平らな
空と海の境界を見ながら
こうして言葉を探す自分を思う
海に囲まれて暮らしていたら
海のうたは描かないだろう
美しい夕陽に恵まれたなら
それより緋色の葡萄酒の一滴を愛するだろう
手に触れる幸福はしあわせに見えにくく
逆光の背中に見え隠れする夢を追うことで
わたしはうたを紡いでいる
そんな気がしている
海は
夕陽は
日毎姿を変え
こころの弦を爪弾き
けして忘れない旋律を残して
わたしは揺れる
手のひらのうたが掬いきれずに