冬の終わり/頃日
結城 森士

「冬の終わり」

空から一滴の涙が流れる時
貴方は一本の露草を摘み取って優しく微笑んだ
水溜りに映った自分の姿に?
違う 貴方が愛でているのは
命を落とした亡骸だ
蒼白い花弁から一滴の血が流れる
貴方は気づかない

空から一滴の涙が流れる
冷たい風が吹く

貴方は冬が好きだと言った
春になると貴方は溶けてしまう
悲しい と言って貴方は泣いた
僕は貴方を捨てた
美しすぎたから

空から一滴の涙が流れる
雪が溶けて久しい

僕は貴方に夏が好きだと言った
貴方を傷つけたかった

雲の隙間から光が零れ落ちる

春になるとやがて溶けてしまう
貴方はそう言って泣くけれど
誰だってやがて消えていく
貴方に傷つけられた人の事を思うとき
僕は冬を疎んじる
貴方は何も言わずに
消えてしまえば良い

空から一滴の涙が零れ落ちる

美しい夢、美しい夢、美しい夢、美しい夢


 いずれ壊れていくことを知っていながら
 なぜ変わろうとしないのか
 そのままの状態でいては
 今後も人を傷つけていくであろうことを
 知っているはずなのに









「頃日」

失う日は失う日の中で
ゆっくりと失っていく
僕の歩調は、感覚を持ったことがない

暮れていく何かに終焉を見ていた
目の前には、孤独な影が細長く伸びている

幸せの人が通り過ぎる
僕は彼の姿を見つめながら
初めて後ろを振り返る
大きな円形の光と
そこに向かって伸びていく道と
一つの細長い影
それは彼にとって
始まりなのだろうか

僕は細長い影と共に
再び終焉を歩み始める
感覚を持ったことはない



未詩・独白 冬の終わり/頃日 Copyright 結城 森士 2007-04-15 10:04:38
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