想像妊娠カメレオン
なかがわひろか

人間に恋したカメレオン
叶わぬ恋だと知ってはいたが
毎日毎日恋焦がれるうちに
想像妊娠をしたカメレオン

二人分たくさんご飯を食べなきゃならない
二人分たくさん水を飲まなきゃならない
天敵から身を守らなくちゃ
もっとたくさんの色を
学ばなければならない

想像妊娠をしたカメレオン
近寄る雄たちにこう言い放つ
あたいにはもう決まった人がいるのよ
雄たちは哂う哂う哂う

お腹を蹴ったわ
だってこんなにお腹が大きいんですもの
それはそれは立派な赤ちゃんが生まれることでしょう
あたしとあの人の
愛の結晶なのですから

カメレオン

カメレオン

人間に恋したカメレオン

その醜い腹には
さぞかしたっぷりと贅肉がつまっているだろう
お前が覚えたたくさんの色のおかげで
誰もお前に気づかなくなっただろう

想像妊娠をしたカメレオン
我が子が生まれる日を
今か今かと
待ちわびる

(「想像妊娠カメレオン」)


自由詩 想像妊娠カメレオン Copyright なかがわひろか 2007-04-15 01:09:59
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