ゆきふらし
なかがわひろか
ゆきふらしはやっとこさ
目を覚ました
去年頑張りすぎたから
いつもよりたっぷり眠った
朝ごはんを食べて
歯を磨いて
お出掛け用の一張羅の服に着替えて
今年も仕事に取り掛かる
ゆきふらし
雪を降らす
たくさんたくさん雪を降らす
ほらほらもう積もり出した
ゆきふらしは
今年の自分の出来に
すっかり満足していた
地面はあたり一面真っ白だから
ゆきふらしは首をかしげた
雪が全然溶けない
ずっとずっと真っ白な絨毯が敷き詰められて
それはどこまでも続いて
ゆきふらしは少しばかり
眠り過ぎた
既に世界はあったまっていて
雪の代わりに
桜の季節になっていた
ゆきふらし
ゆきふらし
今年は出番を少し
間違えた
(「ゆきふらし」)