マグダレナ 〜渇いた女〜 
服部 剛

十字架のネックレスをした女は 
今日も「通りゃんせ」の鳴る交差点を 
紅いハイヒールで夜へと歩く 

人知れぬ部屋で 
男に接吻くちづけられる 
濡れた首すじに 
垂らした十字架 

( そこには 
( 独りの痩せた男の姿が彫られ 
( 両腕を広げうなだれたまま 
( 力無くはりつけられていた  

翌朝 
男の姿が消えた部屋で 
目を覚ました女 
服を着て 
ハンドバッグを手に 
からす達の舞い降りる
路上へ出る 

空腹をみたすパンを探して 

ファーストフードの朝食 
何ごともなかった顔で 
紅茶をすする 
渇いた唇 

( 昨夜
( 眠りの内に見た夢に
( まなざしの深く澄んだ独りの男が現れ
( 平伏した女は 
( 旅に汚れたその足を 
( 絞り落ちる涙で濡らし
( 自らの黒髪で拭った 

紅茶の入った紙コップを 
白い両手で包み 
冷えたこころを暖める 

( 首にかかる
( 十字架のネックレス
( 昨夜より少し、重い。 

紙コップの上に昇る湯気ゆげ 
筆記体の LOVE という型になって 
宙に消えた 








自由詩 マグダレナ 〜渇いた女〜  Copyright 服部 剛 2007-04-14 11:29:35
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