蒼い少年
成澤 和樹
少年時代 何にも無い野原を駆けていた僕は いつの間にかレールの上
行方も知れない列車に座り込んで 外を眺めていた
目の前に広がる世界は昔のまま 緑の季節を湛えている
まるで僕だけが時に乗って 老いてゆくかのようだ
僕の中でもう一人の僕が問う それはそうなのかと
成長し、老いゆくこととは、そういうことなのか、と
無限の大地を捨て、何故、どうやって乗り込んだかも分からず
今まで居眠りしていた この空間の僕を
悪くは無い ただ僕じゃない でも、もう一度降り立つ勇気もない
考えるときがある 僕が僕であったなら
過ぎゆく人たちを見たらきっと おいていかないで、と
叫び 喚き 急いで乗り込むのだろう 我も忘れて
成長も、老いてもいない
分かってたんだ 逃げたことを
畏れてたんだ 薫る風の寂しさを
片隅で眠り込む それが僕だということも
それでおしまいもいいだろう
温もりは気持ちがいいよ
でも湧き上がるんだ
どうしても、抑えきれないものが
まどろみの中 外を眺めていると
一瞬 小さな子が過ぎ去った気がした
興味ない目をして こっちに愛想笑い
つまりは、そういうことなんだ
まだ何もはじまっちゃいない
なれるかな
時を走り抜けてゆく
蒼い少年に