世界球
なかがわひろか

パパにおねだりして買ってもらった
世界
始めはとても小さくて
なかなか言うことを聞いてくれなかったけど
だんだん躾を覚えてきて
今じゃちゃんと言うことを聞く

あたしが小さな頃は
お座りやお手を教えるくらいだったけど
大きくなって
世界も大きくなってきたら
そこにあたしをかたどった
お人形を
たくさんたくさん置いてみた

お人形さんたちは勝手に増殖していって
自分たちでルールとか作って
その他あたしが思いつきで作った動物とかを
殺したり、育てたりしながら
お人形さんたちは生活していった

やっとあたしの手がかからなくなったころ
お人形たちが世界でいろいろなことをした
お人形同士殺しあったり
勝手にグループを作るようになった
緑と青だけだった世界も
赤や黒や黄や
いろんな色が混ざるようになった

時々たくさんの人形が死んだ
そのことで泣いている人形もいた
そのことで威張り散らしている人形もいた

あたしは毎日その光景を見ていた
毎日世界が育っていくのを見ていた

そのうち
だんだん
とっても

飽きてきた

何度か人形たちは同じようなことをして
同じようなことで話し合ったり
そして同じような結果を出したりしていて
繰り返しばかりをするようになったので
あたしはついに飽きてしまった

あたしはパパに買ってもらった世界を
思いっきり蹴っ飛ばした

コロコロと世界は転がった

コロコロと世界は転がった

人形たちはその上で
まだ意味のないことを
話し合っていた

(「世界球」)


自由詩 世界球 Copyright なかがわひろか 2007-04-14 05:35:10
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