ダイアリー・ダイアリー 10・19
平山ネムデ
10・19
ある日星が落ちてきて
空は見渡す限り暗闇になった
わたしは世界に散らばった星を
拾い集める旅に出た
モンゴルの高原には
羽の折れた白鳥座が落ちていたが
少年が食べ物をやり添え木をしてやり
馬を走らせ凧のように空へ帰してやったという
エジプトの砂漠には
喉がカラカラの獅子座が落ちてきたが
道端の老人が売物の壺を砂漠に埋めると一面水を湛え
潤った獅子は空を駆け水飛沫は流星になったという
アラスカの氷河には
氷付けの竪琴座が沈黙していたが
遠くから聞こえるカリブーの足音に共鳴し
調べに合わせてオーロラが踊ったという
世界中を旅して回り
あちらこちらで空へ帰る星と
それを見送る人々を思い出しながら
わたしが流した涙は星になって足元に落ちた
最後にわたしが拾った星は
名もないように輝いていたが
握りしめた手を解くと
ゆっくりと空へ帰り満天の一片を埋めた