足跡
渡邉建志

線路上を逃げている。子供の暗殺者を殺そうとしている。
子供の暗殺者を屋根の上から投げ捨てると、子供は宙中
に消え、屋根の上に犬とも狐ともつかない動物となって
現れる。想念として、つぎをおぼえておろ、という声が
聞こえる。何度でも変身するのだ。


森の道を逃げている。いつ撃たれるかわからない。一方
にはソ連軍が、一方にはアメリカ軍が。わたしは小国の
兵士で、とにかく逃げている。いつ撃たれるかわからな
い。道の一方には、おそらくソ連兵が。もう一方にはア
メリカ兵が。


出あったことのない、これからもおそらく出あうことも
ない人の足跡を見る。その人が書き残していった言葉を
見る。プログラムの構文を間違えてうまく動かないよ、
と言っている。私は足跡をしっかり見ることも許されず
に、やはりまた逃げていく。いつ死ぬか分からない。恋
もなにもない。今すぐにも死ぬのだ。


未詩・独白 足跡 Copyright 渡邉建志 2007-04-13 03:17:31
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