春眠
たね。



花薫じる風
春の果肉は発する
ぬくみの芳香は
顔を撫でる

揺れる山肌の草色
白いかげろうは延び
青い遊戯は列をなす

この涅槃の奥底まで
ワルツの舞いは膨らみ
太陽にほぐされた
飢えのまなこは
ゆるされてゆく

火花散る
早春の追い風
あたらしい胞子は奮う
いちめんの正午
その空間のゴンドラに
堕ちるうつつの瞬間

きみが見えた

軽やかに舞う穂の
穏やかにゆり眠らす
揺りかごはきみだ

色めく飽和の
花神は、この影を食い
溺れゆく微睡の
哀れさの棺を揺らす
ミューズよ

囚われの鎮魂は
甘い風に凪いだ
盲の殻を剥くきみの
慈しみの懐で眠ろう


憂いの瞳孔は
ひかりを注ぎやる
きみと云う形象の
春の輪郭に宿る




自由詩 春眠 Copyright たね。 2007-04-12 13:50:47
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