嘘がつけない
川口 掌

   


誠実で在りたいと思う

突然 割れるわけでもなく
花瓶の水が染み出してくる
その瞬間
隠している筈の物が
表に現れる

もろい心
先へ進む勇気が無い
されど
立ち止まる事も出来ない
ぐるぐると ひたすら
ぐるぐると足踏みを続ける
それは
止めどない不安
そして それ故の
生きている実感



走る事は
いつの間に忘れた
忘れれば刹那
いつも染み出して
遠くで弾ける
毎日 毎日
繰り返し弾け
気が付けば
周波は狂い
次に絡まる周期を
予測出来なくなる

盲目とかした
心が求めてやまない
安心や安らぎ
と言った迷信は
いつの間にかここから離れ
遠い遠い未来へ旅立ち
もう既にここには無い


或いはそれが
目的だったのかも知れない

生きる
生きる 事は
見つからない安らぎを
遠ざけながら探す
そんな旅かもしれない

嘘がつけない
安らぎが欲しい

嘘がつけない
安らぎは何処にあるのか

嘘がつけない
せめて
誠実で在りたいと思う




自由詩 嘘がつけない Copyright 川口 掌 2007-04-12 12:43:21
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