風を待つ鉄棒
ぽえむ君

誰にも使われなくなった鉄棒は
鉄棒自身が自分の目的を忘れていた
そして自分のためにだけに吹く風を
ずっと待つようになった
けれども風は鉄棒を無視するかのように
通り抜けてゆくだけだった
それでも鉄棒は風を待ち続けた
ただひたすら公園の中に立ち
自分にしか吹かない風が
必ず吹くことを信じた
もうすでに表面は錆び始めている
細い両腕を地面に水平に伸ばしながら
まだ待っている
原因はわからない
ある春の日の午後
その風は吹いた
鉄棒の片腕を下から上に
風はちょうど一回転して吹き抜けていった
風の逆上がりだった
鉄棒はようやく
自分が鉄棒であることを取り戻した


自由詩 風を待つ鉄棒 Copyright ぽえむ君 2007-04-12 12:42:09
notebook Home