トロイメライ
モーヌ。
クリスタルの ボールが 放られると
ぼくらの ふたつの 土地や からだに
いのちに 焼かれた 対話が かがやいた
放擲 された ボールには ふらふら 泳ぐ
天の 子どもが つむることの ない
封ぜられた ひとみを こらしている
それは 長かった 時を 旅して きて
はての ほうから まっすぐ 見つめ 返し
はだかの 愛で 飛んで 来ようと 輪を 投じた
“ 苦難の あるところ 救うもの また 生成す ” と
むかしの 詩人は 書いて いた
雲の うえから 飛んで きた
ぼくらを 選んで きた と いう
ずっと ずっと 見つめて いた
ぼくらの くらい 実存を 解き ほごうと...
天上の 陽ざかりの 記憶を 封印 するのに
鼻の したの くぼみは 天使が 押した
指腹の 痕だと いうのだ けれど
エーテルの カスタードを 口に つけた
面差しの 青みの かかる さまよい には
まだ 人間化 していない あふれる ばかりの
言語の かけらが ただよって いるよ
ようやく まっさらに 読むことが できる
死なない 理由と 知恵と わかさが
どこにも 消え去りは しないことを
こんどは ぼくが クリスタルの ボールを...
ころころ ころころ 旅を する
けれども きみを 目がけてだ
かもめの グライダーに 乗って きみは
あたたまる 時と 空と を わかたれて...
いのちに なった 愛は かるい ほほえみを 灼き
ずれながら ひとり 立ってゆく ために あるの だから
ぼくも また 止まるわけには ゆかない
ななかまどの 灼けた 火翼が 授けられ
あの 風力飛行に 届く ように
忘却に 反して ぼくは 文字を すべらし
紙飛行機に ペンで 書いた 賦を 折って
双曲線を かさねるように 飛行 しよう
火に 包まれる 感情を 持つ こだまが
胸のなかの 空野を 渡って 草を なぎ
むらさきの 地平を 帯びて
ささめきながら 未知ゆきを ひびく( それは )
かさなり あって ふれあう ように ふうわり と
かがやかしい 弧のなかに 見えなく 和す... と
花の ことばを 語る うぐいすの 少年が
伝令の ように 草原を 響いて 見えなく なった