海月

十字を背負う身
叶わない約束を守ろうとしている

夜風が吹く
海はこの世の終りを告げている

砂の上に君の名
刻み込む罪の重さ

差し出された手を触れずに立ち上がる
虚しく宙を掴むだけ

温もりを知らない身体に君が教えた温もり
接吻の時は短く、呼吸が止まりそう
君の思いと僕の想いが混ざり合い
繋がりは絶望の味がした
希望の光は始めからなかった

時間に追われずに抱擁を交わし
同じ朝陽を迎えては瞼を閉じた
闇に浮かぶ君の幼い横顔と寝顔

至福の終りは儚く砕け散る
指先を傷つけて、僕の血液を流す
窓際の植木鉢には枯れた観葉植物
希望の光を浴びても何も見出せず
死は其処に在った

君は翌日も瞼を閉じたまま
更に翌日も動かない

呼吸音は一つしかない

君の魂亡き抜け殻を背負う
僕の上に乗る君とは別人の重さ

夜風が君の髪を浚う
向こう岸の見えない
三途の川

緩やかに君と言う体は沖に流されていく
朝焼けに染まる海は鮮血の色

君の名は海に埋まり消えた

君とは別の道を僕は歩き出す
背中越しに君との惜別を誓った


自由詩Copyright 海月 2007-04-11 21:42:41
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