静かな日々の階段を・・・
新谷みふゆ

彼はただ椅子にじっと座っている


赤い林檎のあまさは あたしがみつけだすもの
彼を抱きしめるだけの静かで美しい生活を
いつでも望んで生きている

朝日は遠くにかけていき
あたしはゆっくり立ち上がり珈琲豆を挽く
雨と太陽が草を育て 花を咲かせるように
あたしも彼が必要

熱くもなく冷たくもない言葉でいいの
林檎なら そのまま手渡して
赤い林檎のあまさは あたしが感じるもの

そして あたしの笑った顔は 彼が感じるもの
そして 今日の空模様はふたりで当てるもの
何もない一日の重さをきみなら量れるでしょう


食パンの焼ける匂いがしてきた


赤い林檎の硬さは あたしがみつけだすもの
カーテンを開けた部屋 一日に貰うのは鳥の歌
それで充分 足りる

青空に隠れた月を知り
青いジャムを選んだ彼はブルーズも拒まない
いつまでたってもなれない手つきでふれて欲しい
なつかしいような眼をして

洗ってない 磨かれてない 林檎でいいの
彼の手が渡してくれるなら
赤い林檎の硬さは あたしが感じるもの

どんな日でも夕焼けか夕闇かが燃やしていってくれる
そして最後にキスをして
初めてあたしは今日の夜明けの眩しい光を傍に置くのだろう


自由詩 静かな日々の階段を・・・ Copyright 新谷みふゆ 2007-04-11 10:09:59
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